Gizmodoさんの記事に「APPLEに勝ちたいならプロセッサとか画面で勝負してもだめ、キーボードですよ。」というタイトルの記事がでていました。
この記事の内容は、新しいWindowsタブレット「Surface」についての記事として書かれたものです。
昔は、iPhoneもiPad、共に物理的なキーボードがないとダメだと何度も言われてきましたが、いつの間にか慣れてしまった。
加えて、ライターである著者さんはマイクロソフトの発表会でしたが、文字の打ちやすさからMacBookAirを使っている。
その事から、物理キーが一番重要だと考えたようです。
確かに、これは一理あります。
しかし、自分は残念ながら、これも一端でしかないと思います。
なぜなら、この記事の逆説的に考えれば、「ソフトウェアキーボードも慣れればそれ相応に使える」という事だからです。
そうでなければ普及はしなかったでしょう。
もちろん、満足できない層がいるのも事実で、著者の方もその層なのです。
だからこそ、あえて言えば、違う層もいる、と言えます。
自分は、とある層を考えてみたいと思います。
まず、前提として、iPadを使うユーザーについて考えてみたいと思います。
どういう層の人が多いのでしょうか?
一つはライトユーザーです。
特に、APPLEというブランドに拘っている訳でもなく、流行であったり、何かと便利なのではないか、と感じる層です。
もちろん、Androidユーザーもいますが、iPadの方が多数派のようです。
次に、APPLEファンです。
APPLEの製品だから買う層です。
この層は、Macとの連携を重視したり、単体での使い込み度合いはライトユーザーを凌駕する場合も多いでしょう。
当然、この層にAndroidユーザーはほとんどいません。
最後は、ガジェットマニアです。
この層は、Androidも所有し、どちらかと言うと、両方の違いの把握であったり、良い点悪い点含め、楽しんでいる人でしょう。
この3層は、あくまで予想でしかありませんが、日本のiPadユーザーの7割近くはこれではないでしょうか?
キーボードを重視と言いますが、キーボードを重視したところで、この7割の層を引きぬく事ができないのです。
ライトユーザーは、長文をそこまで打ちません。
検索や、LINE等のサービスの利用が多く、特に早く打つ事を目的としてタブレット端末を使いません。
特に、流行りの端末を選ぶ傾向が強い事でしょう。
APPLEファンであれば、純正ワイヤレスキーボードこそ至高、とでも言ってれるでしょう。
そして、Macとの連携を考えるあたりから、iPadとの分業を考えるでしょう。
家ではiMacかMacBookPro、外出先で文章を書かなければいけないのならMacBookAir、簡単な情報端末として使うのならiPad、という具合に使い分けを考えて行動すると考えられます。
最後にガジェットマニアです。
この層は、収集欲であったり、知的好奇心から購入します。
流行にもそれ相応に敏感でしょう。
これから考えると、キーボードがついたところで、タブレットユーザーの大多数は奪えません。
一体、何がipadを購入させるのでしょうか?
答えは単純です。
「所有欲」です。
所有欲とは、所有しているだけで価値を感じられる製品を持っている事実に対する欲求です。
高級感のある車等は、ほとんどが所有欲から購入に走ります。
下手な事を言えば、高級車は、燃費であったり、実用機能であれば、一般車の方が有利な点も多いのです。
メンテナンス制も悪かったり、修理代も倍以上かかる事も多いでしょう。
それでも、高級車が憧れになるのは、色々な要因もあって、所有欲が満たされるからです。
iPadも同様です。
所有欲の満たされる塊なのです。
特に、少しスマート端末を調べた人だと、元祖とも言えるiPadが「本物」であり、元祖や本物に価値を感じる大多数の人であれば、iPadに所有欲を満たされるでしょう。
広告や口コミもそうでしょう。
それによって使用した生活を思い浮かべ、実際に購入した時に満たされる部分は多いはずです。
ある意味、現在のマイクロソフトでは、iPadの持つ、「所有欲」という部分を奪える価値観が生じないのです。
例えば、ハードウェアの進化が進み、一般的なWindowsのほぼ全てのソフトウェアがWindowsタブレットで動き、OSもそれに最適化され、デザインもiPadに完全に勝利し、初心者でも使いやすく、メディアや口コミで圧倒的な支持を得る事でiPadを超える所有欲をユーザーに感じさせられると思います。
実際に、まだ実機をまともに触れた方も少なく、このWindowsタブレットはまだ「価値観」をユーザーに示せていないのです。
そして、タブレットはコンピューターの変わりになりうる訳ではなく、生活の一部として使う方が現在は適しています。
逆に言えば、機能制限があると言った方がいいでしょう。
それが逆に簡便な操作性になり、ユーザーの利点に強く結びついているのです。
これを完全にWindowsに置き換えた時、価値観が変わるかもしれません。
しかし、自分にはまだ半信半疑です。
一昔前、富士通からLOOX Pというパーソナルコンピューターがでました。
時代はVista直後でした。(Loox PはB5どころか、iPadより全然小さいので、非力で初期搭載のVistaでは重く、XPを入れていましたが)
この機種は、小さいながらもキーボードとタッチパネルを備えたコンピューターでした。
しかし、この機種には非力さと、汎用的すぎた為のユーザビリティの低下が顕著でした。
今では考えられないほどの低い解像度。
感度の悪いタッチパネル。
今考えればマイナス要因ばかりになりますが、当時は最先端でした。
タッチパネル操作の良さもあり、割りと気に入っていましたが、EXCEL専用機にでもしない限り、使い勝手は最悪だったと記憶してます。
なぜ、タブレットは完全に汎用にしてはならないか、それは単純です。
無意識に使える事で、疲れにくくなるからです。
iPadの最も優れている点は、本を扱うほどではありませんが、操作の単純さが最もなのです。
どんなに所有欲を満たしても、使えなければ最終的に無価値になるのです。
所有欲を満たした後、最終的にユーザーから見放されれば、継続して買われる事もありません。
そして、アプリという財産も蓄積されているのも大きいところでしょう。
よく自分は言いますが、アプリは財産みたいなものだ、と。
一度買えば、サポートが終了する事が起きなければ、ほぼずっと使えます。
iPhone3時代(3GSではありません)に購入した電話帳アプリは未だに現役です。
これは、一定以上お金を撒いてしまったライトユーザーには結構な価値があるのではないでしょうか。
長々と取り留めがなくなりましたが、APPLEは現在、購入を促す「価値観の提示」と、「購入後の価値観の低下を防ぐ操作の簡便性」、「アプリという固定資産によるユーザーのつなぎとめ」という黄金比を作っていると言えます。
当然、有料アプリを購入する人は100%ではありませんが。
そして、次に出るマイクロソフトの「Surface」。
いざ発表となり、「物理キーボードあります!」と言われたところで、反応が薄い人が多いでしょう。
逆に言えば、キーボードはタブレットユーザーからすれば「場違いのシステム」と認識されかねないのです。
キーボードはパソコンに、タブレットは触って使う、というスタンダードにたった3年で凝り固まりはじめたからです。
そして、動画も見ましたが、あのキーボードでは日本では失敗する要因があります・・・。早く気付いて欲しいのですが・・・。
加えて、スマート端末が発表された時に言われてたのが「キーを押下する感覚」であって、キーボードではありません。
完全フラットでゴムを押すだけの、ストロークが3mmほどのキーボードを使ったことがありますが、あれは使い勝手が悪いことこの上ありませんでした。
見た目からして、自分が使ったそのキーボードとほぼ似た感じに思えました。
材質が軽く検索してみましたが、載っていなかった為、不確定ではありますが。
どちらにしても、ライトユーザーには、キーボードがつきました、と言われても「あぁ、そうなんだ。」と言う濁った反応に最初はなりかねません。
もし、キーボードがノートパソコンに劣るのであればダメでしょう。
ウルトラブックやMacBookAirを使った方が良いとなるでしょう。
少しでも劣った段階で、プロの仕事には追いつけないからです。
文字を良く書く人であれば、キーボードの完成度によってはSurfaceは売れるでしょう。
そして、ライターを取り込むということは、肯定的な記事が増えると言う事です。
そうなれば、良いイメージで迎え入れられる事になります。
しかし、うまくいかなければライター陣は取り込めません。
そして、ライトユーザーにはキーボードの価値観がどんどん下がっています。
スマートフォンで既にソフトウェアキーボードになれてきているのも強みです。
このペースで、Surfaceがその「簡易キーボード」以外の価値観を与える事ができなければ、大多数であるライトユーザーは取り込めません。
そして、残るは企業での利用だけとなります。
Officeは確実に来ると思うので、問題はありません。
はっきり言えば、Office向けだと自分は思っているんですけどね。
反芻してしまいますが、キーボードがついたところで今更強い価値にはなりえない、という自分なりの感想でした。
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